夜の暗闇を連想させる黒は、重厚、厳粛を表現する色でもあります。ヨーロッパでは古くから黒を喪服の色として用いてきました。
古代ローマの男性の着衣トガ(トーガ)では、喪服用をトガ・プラと呼びます。黒か黒みを帯びた褐色で、装飾を排した簡素なスタイルでした。
中世以降、地域により黒、白、紫などの喪服があったものの、主要な王室では黒い喪服の着用が主流となっていきます。女帝と目されたオーストリアのマリア・テレジア(1717~1780)は夫君の死後15年間、英国のヴィクトリア女王(1837~1901)は実に40年間を喪服姿で過ごし、今も語り草となっています。
所変わって明治維新後の日本。欧米列強に追いつくことが大命題だった当時、国葬など公的な葬儀の際は、一般国民も西欧流の黒色の喪章を付けて弔意を示すよう定められました。わが国でも黒は儀式に多用される色でしたが、天皇・皇族の御大葬報道などを通じて「お葬式の色」という新しいイメージが全国に広がっていったのです。
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